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今日そへに暮れざらめやはと思へども
堪へぬは人の心なりけり

歌の意味
今日だってそのように暮れないことがあろうか、必ず暮れて逢える夜が来ると思うけれども、それまで堪えきれないのは、人の心であったよ。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 882

詞書「御匣殿に初めてつかはしける」
 今日も暮れないことがあろうかと思うけれども、堪えきれないのは人の心であった、と詠んだ歌である。逢える夜が必ず来るとわかっていても、それまでの時を待ちきれない恋のはやる心を詠んでいる。
 詞書によれば、御匣殿に初めて送った歌である。御匣殿は、左大臣藤原仲平の娘明子とする説がある。
 作者の「あつただの朝臣」は藤原敦忠である。左大臣藤原時平の三男で、権中納言に至った。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「あひ見ての後の心にくらぶれば」の歌が採られている。

 初句「今日そへに」は、今日もそのように、の意で、「そへに」は、それゆえに、そのように、の意の副詞である。
 二句「暮れざらめやはと」は、暮れないことがあろうか、必ず暮れる、の意で、「やは」は反語を表す。八音の字余りとなっている。
 三句「思へども」は、思うけれども、の意で、「ども」は逆接を表す。
 四句「堪へぬは人の」は、堪えきれないのは人の、の意である。
 結句「心なりけり」は、心であったよ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

みくしげどの:宮中で天皇の装束などを扱う御匣殿の長官、またその女性
くる:日が暮れる
作者
藤原敦忠
出典
後撰和歌集
前の歌
絶えぬると見ればあひぬる白雲の いとおほよそに思はずもがな
次の歌
いとかくてやみぬるよりは稲妻の 光の間にも君を見てしか