浦に焚く藻塩の煙なびかめや
四方の方より風は吹くとも
- 歌の意味
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浦で焚く藻塩の煙がなびくことがあろうか、いやなびきはしない。たとえ四方のどちらから風が吹いてこようとも。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1361
詞書は前の歌に続き「題しらず」
涙と水辺に寄せる一連の六首目である。浦で焚く藻塩の煙は、四方のどこから風が吹いてもなびくまいと詠み、ほかの誰に言い寄られても心を移さないことを誓う。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
なお本文の結句は「風ふくとも」とあり、「風」の下に「は」を補う注記がある。読み仮名の行も「かせはふくとも」であり、注記に従って「風は吹くとも」とした。
初句「浦に焚く」は、海辺の入り江で火を焚く、の意である。
二句「藻塩の煙」は、海藻に海水を注いで焼き、塩を取るときに立つ煙をいう。海辺の恋の歌に、胸を焦がす思いの景物としてしばしば詠まれる。
三句「なびかめや」の「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語で、なびくだろうか、いやなびかない、の意である。三句で切れる。
四句「四方の方より」は、あらゆる方角から、の意で、さまざまな人からの誘いを思わせる。
結句「風は吹くとも」の「とも」は逆接の仮定である。三句からの倒置で、どんな風が吹いてもという条件を後に置く。前歌が波の下に隠れて泣く恋を詠んだのに対し、この歌は煙がなびかないという強い意志で、心の揺らがなさを示している。
もしほ:海藻に海水を注いで焼き、塩を取ること、またその塩水
なびく:風などに従って横に傾く。人の心が相手に従う意にも用いる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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逢ふことのなみの下草水隠れて しづ心なくねこそ泣かるれ
- 次の歌
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忘るらんと思ふ心の疑ひに ありしよりけに物ぞ悲しき