逢ふことのなみの下草水隠れて
しづ心なくねこそ泣かるれ
- 歌の意味
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逢うことがないので、波の下の草が水に隠れているように人目を忍び、落ち着いた心もなく、声をあげて泣けてしまう。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1360
詞書は前の歌に続き「題しらず」
涙と水辺に寄せる一連の五首目である。逢うことのない恋を、波の下に隠れる草にたとえ、落ち着く心もなく声をあげて泣けてしまうと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
なお本文の四句は「しつなく」とあり、「つ」の下に「心」を補う注記がある。読み仮名の行も「しつこころなく」であり、注記に従って「しづ心なく」と読んだ。
初句「逢ふことの」は、逢うことが、の意である。
二句「なみの下草」の「なみ」は、逢うことが「無み」、すなわちないので、の意と、「波」を掛ける掛詞である。波の下に生える草が、人目を忍ぶ恋のたとえとなる。
三句「水隠れて」は、水の中に隠れて、の意である。草が波の下に隠れるように、思いを隠していることをいう。
四句「しづ心なく」は、落ち着いた心もなく、の意である。波に揺られる下草のさまが重ねられている。
結句「ねこそ泣かるれ」の「ね」は、声をあげて泣く「音」と、下草の「根」を掛ける掛詞である。係助詞「こそ」を受けて已然形「るれ」で結ぶ係り結びで、「るる」は自発を表す。前歌の「恋ひつつぞ寝る」の静かな独り寝から、声をあげて泣く激しさへと移っている。
なみ:「無み」すなわちないのでの意と、「波」を掛ける
みがくる:水の中に隠れる
しづごころ:落ち着いた心
ね:泣く声の「音」と、草の「根」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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妹が袖別れし日より白妙の 衣かたしき恋ひつつぞ寝る
- 次の歌
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浦に焚く藻塩の煙なびかめや 四方の方より風は吹くとも