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憂しと思ふものから人の恋しきは
いづこを忍ぶ心なるらん

歌の意味
つらいと思うものの、それでもあの人が恋しいのは、あの人のどこを慕う心なのだろうか。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 944

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 つらいと思いながらもあの人が恋しいのは、あの人のどこを慕う心なのだろうか、と詠む歌である。つれない相手を恋しく思ってしまう自分の心を、不思議なものとして見つめている。

 初句「憂しと思ふ」は、つらいと思う、の意である。
 二句「ものから人の」は、ものの、あの人が、の意で、「ものから」は逆接を表す。本巻の第九百三十二首、第九百四十三首、第九百四十六首と、「ものから」の語を共有している。
 三句「恋しきは」は、恋しいのは、の意である。本巻の第九百四十六首の三句「恋しきは」と同じ句で、上の句全体の組み立てもよく似ている。
 四句「いづこを忍ぶ」は、どこを慕う、の意で、「忍ぶ」は、ここでは慕わしく思う意の「偲ぶ」である。
 結句「心なるらん」は、心なのだろうか、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。

しのぶ:偲ぶ。慕わしく思う
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
わりなしや強ひても頼む心かな つらしとかつは思ふものから
次の歌
身の憂きを人のつらきと思ふこそ 我とも言はじわりなかりけれ