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唐衣たつたの山の紅葉葉は
物思ふ人の袂なりけり

歌の意味
竜田の山の紅葉は、物思いをする人の袂であったよ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 383

詞書「題しらず」
 竜田の山の紅葉は、物思いをする人の袂であったと詠んだ歌である。悲しみのあまり流す紅の涙に染まった袂を、紅く色づいた竜田山の紅葉に見立てている。
 本巻の第三百五十九首、第三百八十六首と同じ「唐衣たつたの山」の句を用い、衣の縁で「袂」を導いている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「唐衣」は、衣を「裁つ」ことから「たつ」にかかる枕詞である。
 二句「たつたの山の」の「たつ」は、衣を「裁つ」意と、地名の「竜田」を掛けた掛詞である。
 三句「紅葉葉は」は、紅葉した木の葉は、の意である。
 四句「物思ふ人の」は、物思いをする人の、の意で、本巻の第三百六十首の四句と同じ言葉である。
 結句「袂なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、袂であったよ、の意である。「袂」は初句の「唐衣」の縁語で、紅の涙に染まった袖を紅葉に重ねている。

たつ:衣を「裁つ」意と、地名の「竜田」を掛ける
たもと:着物の袖
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
かくばかり紅葉づる色の濃ければや 錦たつたの山といふらん
次の歌
あしひきの山の山守もる山も 紅葉せさする秋は来にけり