初瀬川渡る瀬さへや濁るらん
世にすみがたき我が身と思へば
- 歌の意味
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初瀬川の渡る瀬までが濁っているのだろうか。この世に住みにくい、澄みにくい我が身だと思うので。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1350
詞書「ある人いやしき名取りて遠江国へまかるとて、初瀬川を渡るとて詠み侍りける」
初瀬川の渡る瀬までも濁っているのだろうか、世に住みがたい我が身と思うので、と詠んだ歌である。不名誉な評判を立てられて遠江へ下る身を嘆き、「住み」に「澄み」を掛けて、清らかなはずの川の瀬までも濁って見えると、汚名を負った身のつらさを詠んでいる。
詞書によれば、ある人が不名誉な評判を立てられて遠江国へ下る時に、初瀬川を渡るにあたって詠んだ歌である。本巻の第千三百三十四首も、不名誉な評判を立てられて地方へ下る人をめぐる歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「初瀬川」は、大和の国の初瀬を流れる川である。
二句「渡る瀬さへや」は、渡る瀬までもが、の意で、「さへ」は添加、「や」は疑問の係助詞である。
三句「濁るらん」は、濁っているのだろうか、の意で、二句の「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、下の句と倒置になっている。
四句「世にすみがたき」の「すみ」は、「住み」と「澄み」を掛けた掛詞で、世に住みにくい意と、澄みにくい意を重ねている。「澄む」は「濁る」と対をなし、「川」の縁語である。
結句「我が身と思へば」は、我が身だと思うので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
すむ:「住む」意と、水が「澄む」意を掛ける
はつせがは:大和の国の初瀬を流れる川
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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忘れじと言に結びて別るれば 逢ひ見むまでは思ひ乱るな
- 次の歌
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名にし負はばあだにぞ思ふたはれ島 波のぬれぎぬいく夜着つらん