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賤機にへつるほどなり白糸の
絶えぬる身とは思はざらなん

歌の意味
賤機で経糸を延べるように、ただ時が経っていただけなのだ。白糸が切れるように、あなたとの仲が絶えてしまった身だとは思わないでほしい。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 999

詞書「言ひわづらひて止みにける人に、久しうありて又つかはしける」
 賤機で糸を経るように、ただ時が経っただけなのであって、白糸のように縁の切れた身だとは思わないでほしい、と詠んだ歌である。機織りの糸に二人の仲を重ね、長い無沙汰を言い訳しつつ、関係が絶えたわけではないと伝えている。
 詞書によれば、言い寄りあぐねて途絶えてしまった相手に、久しく経ってから再び送った歌で、次歌の第千首に返しが置かれている。この贈答から第千三首まで、糸や葛のつるに寄せて「絶ゆ」を詠む歌が続いている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「賤機に」は、倭文織の機で、の意で、機織りの縁から二句の「へ」を導いている。
 二句「へつるほどなり」は、経てきた間なのだ、の意で、「へ」に機に経糸を延べる「経」と、時が「経る」意を掛けている。ここで句切れとなる。
 三句「白糸の」は、白い糸のように、の意で、「絶え」を導いている。賤機、経、糸が縁語となっている。
 四句「絶えぬる身とは」は、仲が絶えてしまった身だとは、の意で、次歌の四句「糸は絶えても」がこれを受けている。
 結句「思はざらなん」は、思わないでほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。

しづはた:倭文(しず)を織る機
ふ:機に経糸を延べる意と、時が経つ意を掛ける
いひわづらふ:言い寄りあぐねる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
怨むとも恋ふともいかが雲居より はるけき人をそらに知るべき
次の歌
へつるより薄くなりにし賤機の 糸は絶えてもかひやなからん