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怨むとも恋ふともいかが雲居より
はるけき人をそらに知るべき

歌の意味
恨むといっても恋うといっても、雲居よりもはるかに遠いあなたの心を、どうしてあて推量で知ることができようか。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 998

詞書「返し」
 恨むと言われても恋うと言われても、雲の上より遠い人の心を、どうして空に知ることができようか、と詠んだ歌である。前歌の「恨むれど恋ふれど」を受け、言葉だけでは遠く隔たった相手の本心は知りようがないと切り返している。
 詞書によれば、前歌の第九百九十七首への女の返しである。前歌が女を「知らず顔」だと責めたのに対し、知らないのではなく知りようがないのだと応じており、「知る」の語で贈答がかみ合っている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「怨むとも」は、恨むといっても、の意で、前歌の初句「恨むれど」を受けている。
 二句「恋ふともいかが」は、恋うといっても、どうして、の意で、「いかが」は反語を表し、結句の「べき」と呼応している。
 三句「雲居より」は、雲のある空よりも、の意で、遠く隔たっていることのたとえである。本巻の第千二十五首、第千二十六首も「雲居」によって隔たった仲を詠んでいる。
 四句「はるけき人を」は、はるかに遠い人を、の意で、心の隔たった相手を指している。
 結句「そらに知るべき」は、あて推量で知ることができようか、の意で、「そら」に空と、根拠のない推量の意を掛け、三句の「雲居」と縁語になっている。前歌の「知らず顔」に「知る」の語で応じている。

くもゐ:雲のある所、空。遠く隔たった所のたとえ
そら:空の意と、根拠のないあて推量の意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
恨むれど恋ふれど君が世とともに 知らず顔にてつれなかるらん
次の歌
賤機にへつるほどなり白糸の 絶えぬる身とは思はざらなん