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うち忍びいざすみの江の忘れ草
忘れて人のまたや摘まぬと

歌の意味
人目を忍んで、さあ住の江に住んでみよう。住の江の忘れ草を、あの人が私のことを忘れて、また摘みはしないかと見るために。
鑑賞
巻第八 雑歌上 466

詞書「題しらず」
 人目を忍んで住の江に住んでみよう、その忘れ草を、あの人が私を忘れて再び摘んだりしないかと見るためにと詠む歌である。身につけると憂いを忘れるという忘れ草に寄せて、相手の心変わりを案じる思いを表している。「いざすみ」に「いざ住み」と「住の江」を掛け、「忘れ草」「忘れて」と同じ語を重ねて調子を整えている。本巻の第四百五十六首、第四百六十二首の住吉と同じ地を、ここでは住の江の名で詠んでいる。

 初句「うち忍び」は、人目を忍んで、の意である。
 二句「いざすみの江の」は、さあ住んでみよう、住の江の、の意である。「すみ」は「住み」と地名の「住の江」とを掛けた掛詞である。
 三句「忘れ草」は、萱草のことで、身につけると憂いを忘れるとされた草である。
 四句「忘れて人の」は、私を忘れてあの人が、の意で、三句の「忘れ草」と同じ語を重ねている。
 結句「またや摘まぬと」は、また摘みはしないかと、の意で、「や」は疑問の係助詞である。相手がまた忘れ草を摘んで自分を忘れようとしないかと案じる心を表している。

すみ:住みと、地名の住の江を掛ける
わすれぐさ:萱草。身につけると憂いを忘れるとされた
うちしのぶ:人目を避けて忍ぶ
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
藻刈舟今ぞ渚に来寄すなる 汀の鶴の声騒ぐなり
次の歌
朝ぼらけひぐらしの声聞こゆなり こや明け暮れと人の言ふらん