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何処にかこの頃花の咲かざらむ
所からこそ尋ねられけれ

歌の意味
この頃、どこに花の咲かない所があろうか。どこにでも咲いているが、その場所柄によってこそ、訪ね求められるのだ。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1037

詞書「題しらず」
 この頃は花の咲かない所などどこにもないが、花はその場所柄によってこそ訪ね求められるのだと詠む歌である。花はどこにでも咲く季節になったが、人がわざわざ訪ねていくのは、名所や趣のある場所の花であるという思いを詠んでいる。前の三首がまだ咲かない花を待つ心を詠んだのに対し、この歌は花が咲きそろった頃を詠んでいる。
 なお本文の四句は「所からこそ」とあり、読み仮名の行の「こころからこそ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「何処にか」は、どこに、の意で、「か」は反語を表し、三句の「む」と呼応している。
 二句「この頃花の」は、この頃、花が、の意である。
 三句「咲かざらむ」は、咲かないことがあろうか、いや咲いている、の意で、前歌の第千三十六首の初句「咲かざらむ」と同じ語を、ここでは反語として用いている。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「所からこそ」は、場所柄によってこそ、の意で、係助詞「こそ」は結句の已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。
 結句「尋ねられけれ」は、訪ね求められるのだ、の意で、「られ」は自発の助動詞「らる」の連用形である。

ところがら:所柄。その場所のありさま、場所柄
たづぬ:尋ぬ。訪ね求める
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
咲かざらむ物とはなしに桜花 面影にのみまだき見ゆらん
次の歌
桜花我が宿にのみ有りと見ば なき物くさは思はざらまし