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我が袖の濡るるを人のとがめずは
音をだにやすく泣くべきものを

歌の意味
私の袖が涙で濡れるのを、人がとがめないのならば、せめて声だけでも気楽にあげて泣けるだろうに。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 917

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 涙で袖が濡れるのを人がとがめさえしなければ、せめて声をあげて思いきり泣くこともできるのにと詠む歌である。人目をはばかって泣くことさえ思うにまかせない、忍ぶ恋の苦しさを詠んでいる。

 初句「我が袖の」は、私の袖が、の意である。
 二句「濡るるを人の」は、涙で濡れるのを、人が、の意である。
 三句「とがめずは」は、とがめないならば、の意で、「ずは」は打消の仮定を表す。
 四句「音をだにやすく」は、せめて声だけでも気楽に、の意で、「だに」は最小限の願いを表す。前歌の第九百十六首の結句「ねをのみぞなく」と、声をあげて泣くことを詠む点を共有している。
 結句「泣くべきものを」は、泣けるだろうに、の意で、「ものを」は逆接の詠嘆を表す。人目をはばかって泣くこともできない嘆きを込めている。

とがむ:咎む。とがめる。不審に思って問いただす
ね:音。声。「音を泣く」で声をあげて泣く意
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
思ひます人しなければ真澄鏡 うつれる影とねをのみぞなく
次の歌
数ならぬ身はただにだにおもほえて いかにせよとかながめらるらん