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思ひます人しなければ真澄鏡
うつれる影とねをのみぞなく

歌の意味
私以上に思ってくれる人もいないので、真澄鏡に映る自分の影とともに、声をあげて泣いてばかりいる。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 916

詞書「題しらず」
 私をまさって思ってくれる人もいないので、鏡に映る自分の影を相手に、声をあげて泣いてばかりいると詠む歌である。誰にも顧みられない孤独を、鏡の中の自分だけが共に泣いてくれるという寂しい情景で表している。

 初句「思ひます」は、まさって思う、の意である。
 二句「人しなければ」は、人もいないので、の意で、「し」は強意の副助詞、「ば」は順接の確定条件を表す。
 三句「真澄鏡」は、よく澄んだ鏡のことで、初句の「ます」の音を重ねて導かれている。前歌の第九百十五首の三句「ますかがみ」と、鏡を詠む二首が並んでいる。
 四句「うつれる影と」は、映っている自分の影とともに、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 結句「ねをのみぞなく」は、声をあげて泣いてばかりいる、の意で、係助詞「ぞ」を受けて「なく」と連体形で結んでいる。次歌の第九百十七首の四句と結句「ねをだにやすく泣くべきものを」と、声をあげて泣くことを詠む点を共有している。

ね:音。声。「音を泣く」で声をあげて泣く意
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
影絶えておぼつかなさのますかがみ 見ずはわが身の憂さも知られじ
次の歌
我が袖の濡るるを人のとがめずは 音をだにやすく泣くべきものを