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涙のみ知る身の憂さも語るべく
嘆く心を枕にもがな

歌の意味
涙だけが知っている我が身のつらさも語ることができるように、嘆くこの心を枕にでもできたらよいのに。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1269

詞書「題しらず」
 涙だけが知る身のつらさも語れるように、嘆く心を枕にしたい、と詠んだ歌である。寝所の秘密を知る枕に心をなぞらえ、人に言えないつらさを語りたいという思いを詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「涙のみ」は、涙だけが、の意である。
 二句「知る身の憂さも」は、知っている我が身のつらさも、の意である。
 三句「語るべく」は、語ることができるように、の意で、「べく」は可能を表す。
 四句「嘆く心を」は、嘆いているこの心を、の意である。
 結句「枕にもがな」は、枕であってほしい、の意で、「もがな」は願望を表す。本巻の第千二百六十六首の結句「枕ともがな」と同じく、枕を真実を知るものとする趣向で詠んでいる。

うさ:つらさ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
逢ふことの形見の声の高ければ 我が泣く音とも人は聞かなん
次の歌
あひにあひて物思ふころの我が袖は 宿る月さへ濡るる顔なる