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逢ふことの形見の声の高ければ
我が泣く音とも人は聞かなん

歌の意味
逢うことの形見であるこの琴の音が高いので、それを私の泣く声だとも、あの人は聞いてほしい。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1268

詞書「隣なりける琴を借りて返すついでに」
 逢うことの形見の琴の音が高いので、我が泣く声とも人は聞いてほしい、と詠んだ歌である。隣家から借りた琴を返すにあたり、「事」に「琴」を掛けて、琴を逢瀬の形見になぞらえ、その音を自分の泣く声とも聞いてほしいと、隣の人への思いを託している。
 詞書によれば、隣の家にあった琴を借りて、返す折に添えた歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「逢ふことの」の「こと」は、「事」と「琴」を掛けた掛詞で、逢うことの意と、詞書の琴を重ねている。
 二句「形見の声の」は、形見であるものの音が、の意で、琴を逢うことの形見と見なしている。
 三句「高ければ」は、高いので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
 四句「我が泣く音とも」は、私の泣く声だとも、の意で、琴の「音」に泣く「音」を重ねている。
 結句「人は聞かなん」は、あの人は聞いてほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。

こと:「事」の意と、楽器の「琴」を掛ける
かたみ:思い出のよすがとなるもの
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
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憂きことをしのぶる雨の下にして 我がぬれぎぬは干せど乾かず
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涙のみ知る身の憂さも語るべく 嘆く心を枕にもがな