憂きことをしのぶる雨の下にして
我がぬれぎぬは干せど乾かず
- 歌の意味
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つらいことを忍びつつ、ひそかに降る雨の下にいるので、私の濡れ衣は干しても乾かない。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌四 1267
詞書「あだなる名立ちて言ひ騒がれけるころ、ある男ほのかに聞きて、あはれいかにぞと問ひ侍りければ」
つらいことを忍ぶ雨の下にいて、我が濡れ衣は干しても乾かない、と詠んだ歌である。根拠のない噂を「濡れ衣」といい、それを晴らせずに涙に暮れる身を、乾くことのない衣にたとえている。
詞書によれば、浮気だという噂が立って騒がれていたころ、ある男がそれをかすかに聞いて、気の毒に、どうしているかと尋ねてきたので詠んだ歌である。
作者は「小町が孫」とあり、小野小町の孫にあたる女性とされるが、名は伝わらない。
初句「憂きことを」は、つらいことを、の意である。
二句「しのぶる雨の」の「しのぶる」は、つらさを「忍ぶる」意と、ひそかに降る雨の意を掛けた掛詞である。
三句「下にして」は、その下にいて、の意である。
四句「我がぬれぎぬは」の「ぬれぎぬ」は、無実の罪の意と、雨に濡れた衣の意を掛けた掛詞である。巻第十七の第千二百二首も同じ語を用いて、身に覚えのない浮き名を嘆いている。
結句「干せど乾かず」は、干しても乾かない、の意で、「雨」「濡れ」「干す」「乾く」は縁語である。
しのぶ:つらさを「忍ぶ」意と、雨がひそかに降る意を掛ける
ぬれぎぬ:根拠のない噂や無実の罪の意と、濡れた衣を掛ける
あだな:浮気だという評判
- 出典
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塵に立つ我が名清めん百敷の 人の心を枕ともがな
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逢ふことの形見の声の高ければ 我が泣く音とも人は聞かなん