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あひにあひて物思ふころの我が袖は
宿る月さへ濡るる顔なる

歌の意味
物思いにふさわしい折にちょうど出会って、物思いに沈むこのころの私の袖は涙に濡れ、そこに映る月までもが濡れた顔に見える。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1270

詞書「物思ひけるころ」
 物思いの折に出会って物思うころの我が袖は、宿る月までも濡れた顔をしている、と詠んだ歌である。涙に濡れた袖に映る月までが泣いているように見えると、深い物思いを月に託して詠んでいる。
 詞書によれば、物思いをしていたころの歌である。
 作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。

 初句「あひにあひて」は、まさにその折に出会って、の意で、同じ語を重ねて強めている。字余りとなっている。
 二句「物思ふころの」は、物思いに沈むこのごろの、の意である。
 三句「我が袖は」は、私の袖は、の意で、涙に濡れた袖をいう。
 四句「宿る月さへ」は、袖の涙に映る月までも、の意で、「さへ」は添加を表す。
 結句「濡るる顔なる」は、濡れた顔をしている、の意で、月を人の顔に見立てている。

あふ:時節にちょうど出会う
やどる:光や影が水面などに映る
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
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涙のみ知る身の憂さも語るべく 嘆く心を枕にもがな
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