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数ならぬ身はただにだにおもほえて
いかにせよとかながめらるらん

歌の意味
物の数でもない我が身は、ただでさえつらく思われるのに、この上どうせよというので、こんなにも物思いに沈んでしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 918

詞書「元良の親王、小馬の命婦に物言ひ侍りける時、女の言ひ遣はしける」
 物の数でもない我が身はただでさえつらいのに、この上どうせよというので、こんなにも物思いに沈んでしまうのだろうかと詠む歌である。身分の高い恋人に言い寄られながら、我が身の低さを思って悩む女の心を詠んでいる。
 詞書によれば、元良親王が小馬命婦に言い寄っていた頃に、女の方から贈った歌である。元良親王は陽成天皇の皇子で、恋多き人として知られ、百人一首の「わびぬれば」の歌の作者である。
 作者の「こまの命婦」は小馬命婦である。元良親王と恋の歌を交わした宮廷の女房で、伝は詳らかでない。

 初句「数ならぬ」は、物の数にも入らない、取るに足りない、の意である。本巻の第八百七十二首の「数にもあらぬ」、第八百七十九首の「数ならぬ身」と、我が身を卑下する言葉を共有している。
 二句「身はただにだに」は、我が身はただでさえ、の意で、「だに」は、さえ、の意である。
 三句「おもほえて」は、つらく思われて、の意である。
 四句「いかにせよとか」は、どうせよというのか、の意で、「か」は疑問の係助詞である。
 結句「ながめらるらん」は、物思いに沈んでしまうのだろうか、の意で、「ながむ」は、物思いにふけってぼんやりと見る意、「らる」は自発の助動詞である。係助詞「か」を受けて、現在推量の助動詞「らん」の連体形で結んでいる。

ながむ:眺む。物思いにふけってぼんやりと見る
ものいふ:物言ふ。言い寄る。恋をしかける
作者
小馬命婦
出典
拾遺和歌集
前の歌
我が袖の濡るるを人のとがめずは 音をだにやすく泣くべきものを
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夢にさへ人のつれなく見えつれば 寝ても覚めても物をこそ思へ