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声に立てて言はねどしるしくちなしの
色は我がためうすきなりけり

歌の意味
声に出して言わなくてもはっきりわかる。口無しという名の梔子の色は、私に対しては薄いのであった。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1216

詞書「梔子ある所に乞ひにつかはしたるに、色のいと悪しかりければ」
 声に出して言わなくてもはっきりわかる、梔子の色は私に対して薄いのだった、と詠んだ歌である。贈られた梔子の色の悪さを、「口無し」の名と「薄き」に託して、相手の薄情さを皮肉っている。
 詞書によれば、梔子のある所へ分けてほしいと頼んだところ、届いたものの色がひどく悪かったので詠んだ歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「声に立てて」は、声に出して、の意で、字余りとなっている。三句の「くちなし」と縁をなしている。
 二句「言はねどしるし」は、言わないけれどもはっきりしている、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「くちなしの」の「くちなし」は、染料に用いる「梔子」と「口無し」を掛けた掛詞で、口に出さないという意を重ねている。
 四句「色は我がため」は、色は私に対しては、の意である。
 結句「うすきなりけり」の「うすき」は、色の薄い意と、情の薄い意を掛けた掛詞で、「なりけり」は気づきを表す。

くちなし:黄色の染料にする「梔子」の意と、「口無し」を掛ける
うすし:色の薄い意と、情の薄い意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
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