君はただ袖ばかりをや朽たすらん
逢ふには身をもかふとこそ聞け
- 歌の意味
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あなたは、ただ袖だけを朽ちさせているのだろうか。逢うためには、身をも引き換えにすると聞いているのに。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 675
詞書「返し」
あなたはただ袖だけを朽ちさせているのか、逢うためには命さえ引き換えにすると聞いているのに、と切り返す歌である。詞書から、前歌の第六百七十四首への返しとわかる。前歌の「袖は朽ちにけり」を受け、袖が朽ちる程度の思いではまだ浅いと、相手の誠意を試している。命と逢うことを引き換えにする趣向は、第六百八十二首、第六百八十四首にも見える。
初句「君はただ」は、あなたはただ、の意である。
二句「袖ばかりをや」は、袖だけを、の意で、係助詞「や」は疑問を表し、三句の「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。
三句「朽たすらん」は、朽ちさせているのだろうか、の意で、「朽たす」は朽ちさせる意である。ここで句切れとなる三句切れの歌で、前歌の第六百七十四首の三句「朽ちにけり」を受けている。
四句「逢ふには身をも」は、逢うためには身さえも、の意である。
結句「かふとこそ聞け」は、引き換えにすると聞いている、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形の「聞け」で結ぶ。第六百八十二首の二句「逢ふにかふとか」、第六百八十四首の結句「逢ふにかへてむ」と同じ趣向である。
くたす:朽たす。朽ちさせる
かふ:替ふ。引き換える
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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人知れぬ涙に袖は朽ちにけり 逢ふ夜もあらば何に包まむ
- 次の歌
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人知れず落つる涙は津の国の ながすと見えて袖ぞ朽ちぬる