宮人とならまほしきを女郎花
野辺より霧の立ち出でてぞ来る
- 歌の意味
-
宮仕えの人になりたいと思うのに、女郎花よ、その野辺からは霧ばかりが立ち出でてやって来る。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌三 1199
詞書「題しらず」
宮仕えの人になりたいと思うのに、女郎花の野辺からは霧ばかりが立ち出でて来る、と詠んだ歌である。野にとどまる女郎花に女の身を重ね、宮仕えを望みながら野辺を出られない身と、自在に立ち出でる霧とを対比しているとみられる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「宮人と」は、宮中に仕える人として、の意である。
二句「ならまほしきを」は、なりたいと思うのに、の意で、「まほし」は願望の助動詞、「を」は逆接を表す。
三句「女郎花」は、秋の七草の一つで、名に「女」を含むことから、女の身を重ねている。ここは呼びかけとして置かれている。
四句「野辺より霧の」は、野辺から霧が、の意で、女郎花の咲く野辺から霧が立つさまをいう。
結句「立ち出でてぞ来る」は、立ち出でてやって来る、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「来る」で結ぶ係り結びとなっている。野を出られない女郎花に対し、霧が野を出て来ることを詠んでいる。
みやびと:宮中に仕える人
をみなへし:秋の七草の一つ、黄色の小花をつける草
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
あだ人もなきにはあらずありながら 我が身にはまだ聞きぞならはぬ
- 次の歌
-
我が身にもあらぬ我が身の悲しきに 心もことになりやしにけん