古典和歌stream

あだ人もなきにはあらずありながら
我が身にはまだ聞きぞならはぬ

歌の意味
浮気な人もいないわけではないけれども、自分の身については、まだそのような評判を聞き慣れてはいない。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1198

詞書「女のもとより、あだに聞こゆることなど言ひて侍りければ」
 浮気な人もこの世にいないわけではないが、我が身についてはまだそんな噂を聞き慣れていない、と詠んだ歌である。女から浮気者だと噂されていると言ってきたのに対し、自分はそのような者ではないと穏やかに打ち消している。
 詞書によれば、女のもとから、あなたは浮気者だと聞こえてくるなどと言ってきたので、返した歌である。
 作者の「左大臣」は藤原実頼である。藤原忠平の長男で、後撰和歌集が編まれた村上天皇の時代に左大臣であり、のちに関白、太政大臣に至った。小野宮殿と呼ばれた。

 初句「あだ人も」は、浮気な人も、の意で、女の言ってきた噂の言葉を受けている。
 二句「なきにはあらず」は、いないわけではない、の意で、世間一般には浮気な人もいると認めている。
 三句「ありながら」は、いるけれども、の意で、「ながら」は逆接を表す。
 四句「我が身にはまだ」は、自分の身については、まだ、の意で、世間の人と自分とを分けている。
 結句「聞きぞならはぬ」は、聞き慣れていない、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ならはぬ」で結ぶ係り結びとなっている。噂を穏やかに打ち消している。

あだびと:浮気な人、誠意のない人
ならふ:慣れる
作者
藤原実頼
出典
後撰和歌集
前の歌
逢ふ事の年ぎりしぬるなげきには 身の数ならぬものにぞありける
次の歌
宮人とならまほしきを女郎花 野辺より霧の立ち出でてぞ来る