うばたまの夜の衣をたちながら
帰るものとは今ぞ知りぬる
- 歌の意味
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夜の衣を裁つ、その「たつ」ではないが、共寝もせずに立ったままで帰るものだとは、今はじめて知ったことだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 1175
詞書は前の歌に続き「題しらず」
夜明けの別れを詠む一連の九首目である。夜の衣を着たまま、共寝もせず立ったまま帰るものだとは、今はじめて知ったことだと詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「清慎公」は藤原実頼である。関白藤原忠平の長男で、関白太政大臣に至った。清慎公は没後に贈られた諡号である。
初句「うばたまの」は、夜、黒などにかかる枕詞で、ここでは二句の「夜」にかかる。
二句「夜の衣を」は、寝るときに着る衣を、の意で、共寝のための衣を示す。
三句「たちながら」の「たち」は、衣を裁つ意と、立つ意を掛ける掛詞である。衣を裁つという縁語の上に、立ったまま、共寝もせずに、の意が重なる。
四句「帰るものとは」は、帰るものだとは、の意である。本巻の第千百六十九首、第千百七十首に続き、逢えぬまま帰る者の嘆きを詠む。
結句「今ぞ知りぬる」は、今はじめて知ったことだ、の意である。係助詞「ぞ」が連体形「ぬる」と係り結びをなす。共寝の衣を身に着けながら立ったまま帰るという思いがけない経験を、驚きをもって詠んでいる。
たつ:衣を裁つ意と、立つ意を掛ける
よるのころも:寝るときに着る衣
- 作者
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藤原実頼
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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思ひ出でて今は消ぬべし夜もすがら おき憂かりつる菊の上の露
- 次の歌
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短夜の残り少なく更けゆけば かねて物憂き暁の空