古典和歌stream

思ひ出でて今は消ぬべし夜もすがら
おき憂かりつる菊の上の露

歌の意味
あなたを思い出して、今はもう消えてしまいそうだ。一晩中、起きて別れるのがつらかった、菊の上に置く露のようなこの身は。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1174

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 夜明けの別れを詠む一連の八首目である。あなたを思い出して今はもう消えてしまいそうだ、一晩中、起きて別れるのがつらかった、菊の上の露のようなこの身は、と詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「謙徳公」は藤原伊尹である。右大臣藤原師輔の長男で、摂政太政大臣に至った。謙徳公は没後に贈られた諡号である。

 初句「思ひ出でて」は、思い出して、の意である。別れた相手の面影を思い出すことをいう。
 二句「今は消ぬべし」は、今はもう消えてしまいそうだ、の意で、二句切れとなる。前歌の「今は消えねと」と同じ「今は」を用い、消え入る身を詠む流れを受けている。
 三句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。
 四句「おき憂かりつる」の「おき」は、露が置く意と、寝床から起きる意を掛ける掛詞である。起きて別れるのがつらかった、の意となる。
 結句「菊の上の露」は体言止めで、菊の上に置く露に我が身をたとえる。二句の「消ぬべし」と結句の「露」が倒置の関係にあり、露と消える身を秋の菊の景物に託して結んでいる。

く:消える
おく:露が置く意と、寝床から起きる意を掛ける
作者
藤原伊尹
出典
新古今和歌集
前の歌
置き添ふる露やいかなる露ならん 今は消えねと思ふ我が身を
次の歌
うばたまの夜の衣をたちながら 帰るものとは今ぞ知りぬる