- 歌の意味
-
短い夏の夜が残り少なく更けてゆくので、別れの時が来る前からもう物憂く思われる暁の空である。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌三 1176
詞書「夏の夜、女の許にまかりて侍りけるに、人静まるほど夜いたく更けて逢ひて侍りければ詠みける」
夜明けの別れを詠む一連の十首目である。短い夏の夜が残り少なく更けてゆくので、別れの前からもう物憂く思われる暁の空だ、と詠む。詞書によれば、夏の夜に女のもとへ行ったが、家の人々が寝静まるのを待つうちに夜がひどく更け、ようやく逢えたときに詠んだ歌である。
作者の「藤原清正」は、中納言藤原兼輔の子で、三十六歌仙の一人に数えられる歌人である。
初句「短夜の」は、夏の短い夜の、の意である。本巻の第千百六十九首の「秋の夜」の長さと対照をなす。
二句「残り少なく」は、夜の残りが少なく、の意である。人の寝静まるのを待って逢えた時には、もう夜が尽きかけていたことを示す。
三句「更けゆけば」は、更けてゆくので、の意である。
四句「かねて物憂き」は、前もって物憂い、の意である。まだ別れの時が来ないうちから、別れの暁を思って心が沈む。
結句「暁の空」は体言止めである。逢瀬の喜びのさなかに、すでに別れの暁を思う心で結ばれ、次歌以下の後朝の歌へとつながる。
みじかよ:夏の短い夜
あかつき:夜明け前のまだ暗いころ
- 作者
-
藤原清正
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
うばたまの夜の衣をたちながら 帰るものとは今ぞ知りぬる
- 次の歌
-
明くといへば静心なき春の夜の 夢とや君を夜のみは見ん