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明くといへば静心なき春の夜の
夢とや君を夜のみは見ん

歌の意味
すぐに夜が明けるというので、落ち着いた心もない春の夜の夢——その夢としてだけ、私はあなたを夜にしか見られないのだろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1177

詞書「女みこに通ひそめて、朝に遣はしける」
 後朝の思いを詠む一連の一首目である。すぐに明けるというので落ち着かない春の夜の夢のように、あなたを夜だけ見ることになるのだろうかと詠む。詞書によれば、内親王のもとに通い始めた翌朝に贈った後朝の歌である。
 作者の「大納言清蔭」は源清蔭である。陽成天皇の皇子で、臣籍に下って源の姓を賜り、大納言に至った。

 初句「明くといへば」は、夜が明けるというので、の意である。前歌の「暁の空」を受け、夜明けを告げられて別れる場面から歌い起こす。
 二句「静心なき」は、落ち着いた心もない、の意である。短い春の夜の逢瀬が、心を落ち着ける間もなく終わることを示す。
 三句「春の夜の」は、明けやすい春の夜の、の意である。本巻の第千百六十首の結句「春の夜の夢」と同じく、春の夜の短さに逢瀬のはかなさを重ねる。
 四句「夢とや君を」は、夢としてあなたを、の意で、係助詞「や」が結句の「ん」と係り結びをなす。逢瀬の相手その人を夢にたとえている。
 結句「夜のみは見ん」は、夜だけ見ることになるのだろうか、の意である。夢は夜にしか見られないことから、昼には逢えず夜の短い間しか逢えない恋を嘆く。夢と夜の縁で結ばれた一首である。

をんなみこ:天皇の娘。内親王
しづごころ:落ち着いた心
作者
源清蔭
出典
新古今和歌集
前の歌
短夜の残り少なく更けゆけば かねて物憂き暁の空
次の歌
今朝はしも嘆きもすらんいたづらに 春の夜一夜夢をだに見で