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今朝はしも嘆きもすらんいたづらに
春の夜一夜夢をだに見で

歌の意味
今朝こそは、あなたはさぞ嘆いていることだろう。むなしく春の夜を一晩中、夢さえ見ないで過ごしたのだから。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1178

詞書「弥生のころ、夜もすがら物語して帰り侍りける人の、今朝はいとど物思はしき由申し遣はしたりけるに」
 後朝の思いを詠む一連の二首目である。今朝こそさぞ嘆いていることだろう、むなしく春の夜を一晩中、夢さえ見ないで過ごしたのだから、と詠む。詞書によれば、三月のころ一晩中語り合って帰った人が、今朝はいっそう物思いがつのると言ってよこしたのに答えた歌である。
 作者の「和泉式部」は、越前守大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことからこの名で呼ばれ、のちに一条天皇の中宮彰子に仕えた。

 初句「今朝はしも」は、今朝こそは、の意である。「しも」は強意の副助詞で、相手の文の「今朝はいとど」を受けている。
 二句「嘆きもすらん」は、嘆きもしているだろう、の意で、二句切れとなる。相手の「物思はしき」という訴えを、推量の形で受け止めている。
 三句「いたづらに」は、むなしく、の意である。語り明かしただけで共寝をしなかった一夜を指す。
 四句「春の夜一夜」は、春の夜を一晩中、の意である。前歌と同じく「春の夜」を詠み、前歌が短い春の夜の夢を嘆いたのに対し、本歌はその夢さえ見なかった一夜をいう。
 結句「夢をだに見で」は、夢さえ見ないで、の意である。夜通し語り合って眠らなかったことを、夢さえ見なかったと言い表す。三句と結句が二句の理由を倒置して示し、相手の嘆きを軽くからかうような応答になっている。

ものがたり:語り合うこと
ものおもふ:思い悩む
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
明くといへば静心なき春の夜の 夢とや君を夜のみは見ん
次の歌
心からしばしと包むものからに 鴫の羽掻きつらき今朝かな