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くちなしの色をぞ頼む女郎花
花にめでつと人に語るな

歌の意味
口無しに通じるくちなし色を頼みにしている。女郎花よ、私が花に心ひかれたと、人に語ってくれるな。
鑑賞
巻第三 秋歌 158

詞書「題しらず」
 女郎花の黄色をくちなし色と見て、口が無いという名のとおり、私が花に心ひかれたことを人には語らないでくれと頼む歌である。女郎花を女性に見立て、その人に心を寄せたことを秘めておきたいという機知に富んでいる。
 作者の「小野宮太政大臣」は藤原実頼である。藤原忠平の長男で、摂政、太政大臣に至った。邸の名から小野宮殿と呼ばれ、有職故実の小野宮流の祖とされる。

 初句「くちなしの」は、「くちなし」に梔子の実で染めた黄色の意と、口が無いの意を掛けた掛詞である。女郎花の黄色い花の色を梔子の色に見立てている。
 二句「色をぞ頼む」は、その色をこそ頼みにする、の意で、「ぞ」の係り結びにより連体形の「頼む」で結ぶ。ここで句切れとなる。
 三句「女郎花」は、女郎花への呼びかけである。
 四句「花にめでつと」は、花に心ひかれたと、の意で、「つ」は完了の助動詞である。
 結句「人に語るな」は、人に話すな、の意で、「な」は禁止の終助詞である。前歌が女郎花の色ゆえに人が宿ったと詠んだのに続き、本歌は女郎花の色に口止めを頼んでおり、色をめぐる趣向が連なっている。

くちなし:梔子の実で染めた黄色の意と、口が無い意を掛ける
めづ:心ひかれる。愛でる
作者
藤原実頼
出典
拾遺和歌集
前の歌
手もたゆく植ゑしもしるく女郎花 色ゆゑ君が宿りぬるかな
次の歌
女郎花匂ふあたりにむつるれば あやなく露や心おくらん