古典和歌stream

山里の物さびしさは荻の葉の
なびくごとにぞ思ひやらるる

歌の意味
山里のもの寂しさは、荻の葉が風になびくたびに、思いやられることだ。
鑑賞
巻第五 秋歌上 266

詞書「秋、大輔が太秦のかたはらなる家に侍りけるに、荻の葉に文を挿してつかはしける」
 荻の葉が風になびくたびに、あなたのいる山里のもの寂しさが思いやられると詠んだ歌である。荻の葉に手紙を挿して送り、その葉ずれの音が秋の寂しさを誘うことに寄せて、遠くにいる相手を気づかっている。
 詞書によれば、秋に、大輔という女房が太秦のそばの家に滞在していたので、荻の葉に手紙を挿して送ったものである。大輔は実頼と多くの贈答を交わした女房である。
 作者の「左大臣」は藤原実頼である。関白藤原忠平の長男で、後撰和歌集が撰ばれたころ左大臣であった。のちに関白太政大臣に至り、小野宮殿と呼ばれた。
 なお本文の二句は「物さびしさは」とあり、読み仮名の行の「ものさひしきは」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「山里の」は、山里の、の意で、相手の滞在する太秦あたりを指している。
 二句「物さびしさは」は、もの寂しさは、の意である。
 三句「荻の葉の」は、荻の葉が、の意で、詞書の手紙を挿した荻の葉を受けている。本巻の第二百二十首でも荻の葉が秋の訪れを告げている。
 四句「なびくごとにぞ」は、風になびくたびに、の意で、「ぞ」は係助詞である。
 結句「思ひやらるる」の「るる」は自発の助動詞「る」の連体形で、四句の「ぞ」と係り結びをなす。自然と思いやられることだ、の意である。

うづまさ:京都の西の郊外の地名、太秦
をぎ:水辺に生えるイネ科の草、葉ずれの音で秋風の訪れを知らせるものとされた
おもひやる:遠く離れた人や場所の様子を思い浮かべる
作者
藤原実頼
出典
後撰和歌集
前の歌
松のねに風の調べをまかせては 竜田姫こそ秋は弾くらし
次の歌
ほには出でぬいかにかせまし花すすき 身を秋風に捨てや果ててん