松のねに風の調べをまかせては
竜田姫こそ秋は弾くらし
- 歌の意味
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松の根元の音に風の調べをゆだねて、竜田姫こそが、秋には琴を弾いているらしい。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌上 265
詞書「是貞の親王の家の歌合に」
松の音に風の調べをゆだねて、秋には竜田姫こそが琴を弾いているらしいと詠んだ歌である。松を吹く風の音を琴の音に聞きなし、その奏者を秋の女神である竜田姫と見立てている。
詞書によれば、光孝天皇の皇子是貞親王の家で行われた歌合で詠まれたものである。本巻巻頭の第二百十七首も同じ歌合の歌である。前歌が松風を波の音と聞いたのに対し、本歌は琴の調べと聞いている。
作者の壬生忠岑は古今和歌集の撰者の一人で、右衛門府生などを務めた。歌論書の和歌体十種の作者とされ、三十六歌仙の一人である。小倉百人一首には「有明のつれなく見えし別れより」の歌が採られている。
初句「松のねに」の「ね」は、松の「根」と、琴の「音」を掛けた掛詞である。前歌の第二百六十四首の松風を受けている。
二句「風の調べを」は、風の奏でる調べを、の意で、松風の音を琴の音色に見立てている。
三句「まかせては」は、ゆだねて、の意である。
四句「竜田姫こそ」の「竜田姫」は、竜田山を神格化した秋の女神で、「こそ」は係助詞である。
結句「秋は弾くらし」の「らし」は根拠のある推量で、秋には弾いているらしい、の意である。四句の「こそ」を受けて已然形「らし」で結んでいる。「調べ」「弾く」は「ね」の縁語である。
ね:松の「根」と、琴の「音」を掛ける
たつたひめ:秋をつかさどる女神、竜田山を神格化したもの
しらべ:楽器の音色、旋律
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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秋風の吹きしく松は山ながら 波立ち返る音ぞ聞こゆる
- 次の歌
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山里の物さびしさは荻の葉の なびくごとにぞ思ひやらるる