山河はきのはながれず浅き瀬を
堰けば淵とぞ秋はなるらん
- 歌の意味
-
山の川は、木の葉が流れ去らずに浅い瀬をせき止めるので、秋には淵となるのだろう。
- 鑑賞
-
巻第七 物名 368
詞書「はぎの花」
山の川は木の葉が流れずに浅い瀬をせき止めるので、秋には淵となるのだろうと詠む歌である。散り積もる木の葉が川の姿を変えるさまを推し量り、初句から二句にかけての「はきのはな」の音の続きに、詞書の「萩の花」の名を隠している。詞書の「はぎの花」は、この歌に詠み込まれた物の名である。
作者の「忠岑」は、古今和歌集の撰者の一人で、壬生忠見の父である。三十六歌仙に数えられる。
古今和歌集の秋歌下の春道列樹の「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」も、山川に積もって流れない紅葉を詠んでいる。
初句「山河は」は、山の中を流れる川は、の意である。
二句「きのはながれず」は、木の葉が流れず、の意である。初句の末の「は」と続けて「はきのはな」の名を隠している。
三句「浅き瀬を」は、浅い瀬を、の意である。
四句「堰けば淵とぞ」は、せき止めるので淵と、の意で、已然形に「ば」がついて理由を表し、係助詞「ぞ」で強めている。
結句「秋はなるらん」は、秋にはなるのだろう、の意で、「らん」は現在推量の助動詞であり、係助詞「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。
はぎのはな:萩の花。「山河は木の葉流れず」の音の続きに隠して詠み込む
せく:水の流れをせき止める
- 作者
-
壬生忠岑
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
白露のかかるがやがて消えざらば 草葉ぞ玉の櫛笥ならまし
- 次の歌
-
滝つ瀬の中にたまつむしら波は 流るる水を緒にぞ貫きける