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墨染の君が袂は雲なれや
絶えず涙の雨とのみ降る

歌の意味
墨染の喪服を着たあなたの袂は雲なのだろうか。絶えず涙が雨となって降るばかりである。
鑑賞
巻第十六 哀傷歌 843

詞書「思ひに侍りける人をとぶらひにまかりてよめる」
 喪に服している人を弔問に訪れて詠んだ歌である。黒い喪服の袂を雨雲に見立て、そこから絶え間なく涙が雨のように降ると詠む。喪服の色と雨雲の暗さを重ね、相手の深い悲しみを思いやっている。
 涙を雨とする表現は、本巻冒頭の第八百二十九首の「泣く涙雨と降らなむ」にも見える。
 作者の「たたみね」は壬生忠岑である。古今集の撰者の一人で、三十六歌仙の一人である。

 初句「墨染の」は、墨で染めたような黒い色で、喪服を指す。
 二句「君が袂は」は、喪中の相手の袂である。
 三句「雲なれや」の「や」は疑問を表し、雲なのだろうか、と問いかける。黒い喪服を雨雲に見立てている。三句切れである。
 四句「絶えず涙の」は、絶え間ない涙の、の意である。
 結句「雨とのみ降る」は、雨となってひたすら降るばかりだ、の意である。「雲」「雨」「降る」は縁語である。

おもひ:喪に服すること、喪中
とぶらふ:見舞う、弔問する
すみぞめ:墨で染めたような黒い色。喪服の色
作者
壬生忠岑
出典
古今和歌集
前の歌
朝露のおくての山田かりそめに 憂き世の中を思ひぬるかな
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あしひきの山辺に今はすみぞめの 衣の袖は干る時もなし