恋ひわびて死ぬてふことはまだなきを
世のためしにもなりぬべきかな
- 歌の意味
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恋に思い悩んで死ぬということは、まだ世に例がないのに、私はその世の例にもなってしまいそうだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1036
詞書「つれなく侍りける人に」
恋に悩み抜いて死ぬということはまだ聞かないが、自分がその世の例にもなってしまいそうだ、と詠んだ歌である。つれない相手への恋の苦しさを、前例のない恋死にの例になりそうだと誇張して訴えている。
詞書によれば、つれない態度をとる人に送った歌である。
作者の「たたみね」は壬生忠岑である。古今和歌集の撰者の一人で、三十六歌仙に数えられる。歌論書「和歌体十種」の作者とも伝えられ、小倉百人一首には「有明のつれなく見えし別れより」の歌が採られている。
初句「恋ひわびて」は、恋に思い悩んで、の意で、「わぶ」は気力を失うほど思い悩む意である。
二句「死ぬてふことは」は、死ぬということは、の意で、「てふ」は「といふ」のつまった形である。
三句「まだなきを」は、まだ例がないのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
四句「世のためしにも」は、世の中の前例にも、の意で、自分が最初の例になることを言っている。
結句「なりぬべきかな」は、なってしまいそうだ、の意で、「ぬべき」は強い推量、「かな」は詠嘆の終助詞である。
こひわぶ:恋に思い悩む
ためし:前例、手本
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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みみなしの山ならずとも呼子鳥 何かは聞かん時ならぬ音を
- 次の歌
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影見れば奥へ入りける君により などか涙のとへは出づらん