君が代にあふさか山の岩清水
木隠れたりと思ひけるかな
- 歌の意味
-
わが君の御代にめぐり逢った逢坂山の岩清水のように、自分は木陰に隠れて世に知られない身だと思っていたことだ。
- 鑑賞
-
巻第十九 雑体 1004
詞書は前の歌に続き「古歌に加へて奉れる長歌」
前歌の第千三首は、古歌に添えて奉った壬生忠岑の長歌であり、この歌はその反歌である。長歌では身分の低さや老いの嘆きを述べつつ、歌を召された喜びを詠んでいる。反歌ではその思いを一首にまとめ、自分を木陰に湧く岩清水にたとえて、世に埋もれていた身が君の御代に見いだされた感慨を詠んでいる。
作者は壬生忠岑である。古今和歌集の撰者の一人で、壬生忠見の父である。身分は低く、右衛門府生などを務めた。三十六歌仙の一人である。
初句「君が代に」は、醍醐天皇の御代を指す。「に」は二句の「逢ふ」に続く。
二句「あふさか山の」は、君の御代に「逢ふ」と地名の「逢坂山」とを掛ける掛詞である。
三句「岩清水」は、岩の間から湧き出る清水で、作者自身をたとえる。逢坂山は清水の名所として知られた。
四句「木隠れたりと」は、木陰に隠れて人目につかないことで、世に埋もれた身の比喩である。前歌の長歌で述べた身の沈淪を受ける。
結句「思ひけるかな」は、「ける」が今になって気づいた詠嘆、「かな」が詠嘆の終助詞である。そう思っていたが、今こうして召し出されたという感慨を込める。
あふさか:君の御代に「逢ふ」意と、地名「逢坂山」を掛ける
いはしみづ:岩の間から湧き出る清水
こがくる:木陰に隠れる、人目につかない
- 作者
-
壬生忠岑
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
山河の音にのみ聞くももしきを 身をはやながら見るよしもがな
- 次の歌
-
梅の花見にこそ来つれ鶯の ひとくひとくと厭ひしもをる