春日野の雪間を分けて生ひ出で来る
草のはつかに見えし君はも
- 歌の意味
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春日野の雪の間を分けて生え出てくる若草のように、ほんのわずかに見えたあなたよ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 478
詞書「春日の祭にまかれりける時に、物見に出でたりける女のもとに、家を尋ねてつかはせりける」
春日祭の見物に出ていた女性をわずかに見かけ、その家を探し当てて贈った歌である。春日野の残雪の間から芽を出す若草の初々しい姿を序とし、ほんの一瞬見えた相手の面影を重ねている。早春の清らかな景と、垣間見た人への新鮮なときめきが調和した一首である。
作者の「みぶのただみね」は壬生忠岑である。古今和歌集の撰者の一人で、官位は低かったが歌才に優れ、歌論書『和歌体十種』の作者とされる。三十六歌仙の一人で、歌人壬生忠見の父である。
初句「春日野の」は大和国の歌枕で、春日大社のある野である。詞書の春日祭の場と重なり、景に現実の舞台を与えている。
二句「雪間を分けて」は、積もった雪の消えた間を押し分けての意で、早春の景を示す。
三句「生ひ出で来る」は、芽を出して生えてくるの意である。初句からここまでが四句の「草」を修飾し、「はつかに」を導く序詞となっている。字余りの句である。
四句「草のはつかに」の「はつかに」は、わずかに、ほのかにの意で、萌え出たばかりの草の少なさと、相手をちらりと見たことを重ねている。本巻の第四百八十一首も「はつかに」の語を用い、わずかに触れた相手への恋を詠んでいる。
結句「見えし君はも」の「はも」は、強い詠嘆を表す終助詞で、今は見えない相手を慕う気持ちを込めている。前々歌の第四百七十六首と同じく、垣間見から始まる恋の歌である。
ゆきま:雪が消えて地面の見えている所
おひいづ:芽を出して生える
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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知る知らぬなにかあやなくわきて言はむ おもひのみこそしるべなりけれ
- 次の歌
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山桜霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ