知る知らぬなにかあやなくわきて言はむ
おもひのみこそしるべなりけれ
- 歌の意味
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知っているとか知らないとか、どうしてわけもなく区別して言うのでしょう。ただ恋の思いの火だけが、道しるべとなるのですよ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 477
詞書「返し」
前歌の第四百七十六首に答えた女の返歌である。業平が「見ずもあらず見もせぬ」と、よく見てもいない相手を恋うことを嘆いたのに対し、知る知らぬを区別する必要はない、ただ思いこそが恋の道しるべだと切り返している。贈歌の「あやなく」をそのまま取り込んで答える、機知に富んだ返歌である。『伊勢物語』第九十九段にも収められている。
初句「知る知らぬ」は、相手を知っているか知らないかということで、贈歌の「見ずもあらず見もせぬ」を言い換えて受けている。
二句「なにかあやなく」の「なにか」は反語で、どうして言うことがあろうかの意となる。「あやなく」は贈歌の四句の語をそのまま用いて切り返したものである。
三句「わきて言はむ」の「わく」は、区別するの意である。「む」は二句の「なにか」を受けて反語の意を表し、三句で切れる。
四句「おもひのみこそ」の「おもひ」は、恋の「思ひ」に「火」を掛けた掛詞で、火が夜道を照らす道しるべとなることを踏まえている。「こそ」は係助詞で結句の「けれ」と係り結びをなす。
結句「しるべなりけれ」の「しるべ」は道案内の意である。本巻の第四百七十二首の結句「しるべなりける」と語を共有し、あちらは風、こちらは思いの火を恋の道案内としている。
わく:区別する、分ける
おもひ:恋の思いの意と、火を掛ける
しるべ:道案内、手引き
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは あやなく今日やながめ暮らさむ
- 次の歌
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春日野の雪間を分けて生ひ出で来る 草のはつかに見えし君はも