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人知れぬ人待ち顔に見ゆめるは
誰が頼めたる今宵なるらん

歌の意味
人知れず誰かを待っている顔つきに見えるが、誰があてにさせた今宵なのだろうか。
鑑賞
巻第十九 雑恋 1220

詞書「まだ少将に侍りける時、采女町の前をまかり渡りけるに、明日香の采女眺め出だして侍りけるに遣はしける」
 人知れず誰かを待っている顔つきに見えるが、誰があてにさせた今宵なのだろうかと詠む歌である。詞書から、作者がまだ少将であった頃、采女町の前を通りかかると、明日香の采女が外を眺めていたので送った歌とわかる。物思わしげに外を眺める采女の様子を、恋人を待つ顔と見立て、誰を待っているのかと戯れに問いかけている。次歌の第千二百二十一首はこれに対する采女の返しである。
 作者の「小野宮太政大臣」は藤原実頼である。関白藤原忠平の長男で、関白太政大臣に至った。小野宮流の祖である。
 なお本文の詞書の「また」は「まだ」と解した。

 初句「人知れぬ」は、人に知られない、の意で、ひそかな恋をいう。
 二句「人待ち顔に」は、誰かを待っている顔つきに、の意で、初句の「人」を重ねている。次歌の第千二百二十一首の結句「待つ人もなし」と、待つことをめぐって対をなしている。
 三句「見ゆめるは」は、見えるようだが、の意で、「める」は推定の助動詞「めり」の連体形である。
 四句「誰が頼めたる」は、誰があてにさせた、の意で、「頼む」は下二段活用で、あてにさせる意である。
 結句「今宵なるらん」は、今宵なのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形である。

うねめまち:采女町。宮中で采女の住む所
たのむ:頼む。下二段活用で、あてにさせる
まちがほ:待ち顔。人を待っている顔つき
作者
藤原実頼
出典
拾遺和歌集
前の歌
いつしかも筑摩の祭り早せなん つれなき人の鍋の数見む
次の歌
池水の底にあらではねぬなはの くる人もなし待つ人もなし