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宵々に君をあはれと思ひつつ
人には言はで音をのみぞ泣く

歌の意味
夜ごと夜ごとにあなたをいとしいと思いながら、人には打ち明けずに、声をあげて泣いてばかりいる。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1234

詞書「中将に侍りける時、女に遣はしける」
 巻第十四の巻頭歌であり、恋の贈答を並べる一連の一首目である。夜ごとにあなたをいとしく思いながら、人には言わずに声をあげて泣くばかりだと訴える。詞書によれば、作者が近衛中将であったころに女のもとへ贈った歌である。
 作者の「清慎公」は藤原実頼である。関白太政大臣藤原忠平の長男で、関白、太政大臣、摂政を歴任し、小野宮殿と呼ばれた。清慎公は没後に贈られた諡号である。
 女はこの歌に次歌の第千二百三十五首で答えている。

 初句「宵々に」は、毎夜毎夜、の意である。一夜かぎりではなく、夜ごとに思いが繰り返されることを示す。次歌の三句「宵々を」がこの語をそのまま受けている。
 二句「君をあはれと」の「あはれ」は、相手をいとしく思う心である。思いの相手と中身とを率直に名指している。
 三句「思ひつつ」の「つつ」は反復と継続を表し、初句の「宵々に」と呼応して、思いが夜ごとに続くことを重ねる。
 四句「人には言はで」の「で」は打消の接続で、言わないで、の意である。思いを胸に秘める忍ぶ恋の姿が示される。
 結句「音をのみぞ泣く」は、声をあげて泣いてばかりいる、の意である。「ぞ」の係り結びで「泣く」は連体形となる。口に出せない思いが泣く声となってあふれるという対照で結び、恋の嘆きを主とする本巻の巻頭にふさわしい一首となっている。

よひよひ:毎夜毎夜、夜ごとの宵
ね:声、泣き声
作者
藤原実頼
出典
新古今和歌集
前の歌
頼めおかんたださばかりを契りにて 憂き世の中の夢になしてよ
次の歌
君だにも思ひ出でける宵々を 待つはいかなる心地かはする