池水の底にあらではねぬなはの
くる人もなし待つ人もなし
- 歌の意味
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池の水の底でなくては蓴菜をたぐる人もいないように、共寝もしない私のもとには、来る人もいないし、待つ人もいない。
- 鑑賞
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巻第十九 雑恋 1221
詞書「返し」
池の水の底でなくては蓴菜をたぐる人もいないように、私のもとには来る人もなく、待つ人もいないと詠む歌である。前歌の第千二百二十首の、誰を待っているのかという問いかけに対する明日香の采女の返しである。池の底に生える蓴菜の「根ぬなは」に「寝ぬ」を、蓴菜を「繰る」に「来る」を掛け、共寝をする相手もいないので、待つ人などいないと、相手の戯れを軽くかわしている。
作者の明日香采女は、明日香の名で呼ばれた采女で、伝は詳らかでない。
初句「池水の」は、池の水の、の意である。
二句「底にあらでは」は、底でなくては、の意で、「で」は打消の接続助詞である。蓴菜が池の底に根を張っていることをいう。
三句「ねぬなはの」は、「ねぬなは」が蓴菜の古名「根ぬなは」と、共寝をしない意の「寝ぬ」を掛ける掛詞である。ここまでが四句の「くる」を導く序詞となっている。
四句「くる人もなし」は、「くる」が蓴菜を「繰る」と、人が「来る」を掛ける掛詞である。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
結句「待つ人もなし」は、待つ人もいない、の意で、四句と同じ形を重ねて調子を整えている。前歌の第千二百二十首の二句「人待ち顔に」に対し、待つ人などいないと答えている。
ねぬなは:根蓴。蓴菜の古名。「寝ぬ」を掛ける
くる:蓴菜を「繰る」意と、人が「来る」意を掛ける
うねめ:采女。宮中で天皇の食事などに奉仕した女官
- 作者
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明日香采女
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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人知れぬ人待ち顔に見ゆめるは 誰が頼めたる今宵なるらん
- 次の歌
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人知れず頼めし事は柏木の もりやしにけむ世にふりにけり