人知れず頼めし事は柏木の
もりやしにけむ世にふりにけり
- 歌の意味
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人知れず約束したことは、柏木の森から漏れてしまったのだろうか、世間に広まってしまった。
- 鑑賞
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巻第十九 雑恋 1222
詞書「中納言敦忠、兵衛佐に侍りける時に、忍びて言ひ契りて侍りけることの世に聞こえ侍りにければ」
人知れず約束したことは、柏木の森から漏れたのだろうか、世間に広まってしまったと詠む歌である。詞書から、藤原敦忠がまだ兵衛佐であった頃に、ひそかに言い交わした仲が世間に知れ渡ってしまったので詠んだ歌とわかる。兵衛府の異称である「柏木」に兵衛佐の敦忠を指し、「森」に「漏り」を掛けて、秘密を漏らしたのはあなたではないかと、とがめる心をこめている。
作者の右近は、右近少将藤原季縄の娘で、醍醐天皇の中宮穏子に仕えた。百人一首の「忘らるる」の歌で知られる。
なお本文の詞書の「兵街佐」は兵衛佐の誤りとみて改めた。
初句「人知れず」は、人に知られずに、の意で、ひそかな仲をいう。
二句「頼めし事は」は、あてにさせた約束は、の意で、二人が言い交わした契りをいう。
三句「柏木の」は、柏木の森の、の意で、柏木は兵衛府の異称であり、兵衛佐の敦忠を指している。
四句「もりやしにけむ」は、「もり」が「森」と、秘密が「漏り」を掛ける掛詞である。係助詞「や」は過去推量の助動詞「けむ」の連体形で結ぶ係り結びで、漏れてしまったのだろうか、の意となる。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
結句「世にふりにけり」は、世間に広まってしまった、の意で、「ふり」は世に古りて知れ渡る意で、「漏り」の縁で雨が「降り」の意も響かせている。
かしはぎ:柏木。兵衛府の異称
もり:「森」と、秘密が「漏り」を掛ける
ふる:世に知れ渡る意の「古る」に、雨が「降る」意を響かせる
たのむ:頼む。下二段活用で、あてにさせる
- 作者
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右近
- 出典
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拾遺和歌集
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池水の底にあらではねぬなはの くる人もなし待つ人もなし
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秋萩の花も植ゑおかぬ宿なれば しか立ち寄らむ所だになし