遅れゐて鳴くなるよりは葦鶴の
などか齢を譲らざりけん
- 歌の意味
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主人に先立たれて後に残され、鳴いているよりは、葦辺の鶴はどうしてその長い寿命を主人に譲らなかったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第八 雑歌上 497
詞書「小一条左大臣まかり隠れて後、かの家に侍りける鶴の鳴き侍りけるを聞き侍りて」
主人に先立たれて鳴いているよりは、千年の寿命を持つという鶴は、どうしてその齢を主人に譲らなかったのだろうかと詠む歌である。詞書から、弟である小一条左大臣藤原師尹が亡くなった後、その家で飼われていた鶴が鳴くのを聞いて詠んだ歌とわかる。長寿の象徴である鶴の声に、早く世を去った弟を惜しむ心を重ね、かなわぬ願いとして悲しみを表している。次歌の第四百九十八首も三句に「葦鶴の」を置き、鶴を詠む二首が並べられている。
作者の「小野宮太政大臣」は藤原実頼である。関白藤原忠平の長男で、関白太政大臣に至り、清慎公とおくり名された。本巻の第四百三十三首、第四百七十二首の詞書に見える清慎公はこの人である。
初句「遅れゐて」は、主人に先立たれて後に残されて、の意である。
二句「鳴くなるよりは」は、鳴いているのが聞こえるよりは、の意で、「なる」は音から推定する助動詞「なり」の連体形である。
三句「葦鶴の」は、葦辺にいる鶴の、の意で、次歌の三句と同じ句である。本巻の第四百五十九首、第四百六十五首にも鶴が詠まれている。
四句「などか齢を」は、どうして寿命を、の意で、「か」は疑問の係助詞である。鶴は千年の寿命を持つとされた。
結句「譲らざりけん」は、譲らなかったのだろうか、の意で、係助詞「か」を受けて連体形の「けん」で結んでいる。
あしたづ:葦辺にいる鶴
よはひ:寿命。年齢
おくれゐる:先立たれて後に残る
- 作者
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藤原実頼
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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明日香川しがらみ渡し塞かませば 流るる水ものどけからまし
- 次の歌
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年を経て立ち馴らしつる葦鶴の いかなる方に跡とどむらん