古典和歌stream

我が身にもあらぬ我が身の悲しきに
心もことになりやしにけん

歌の意味
自分の身とも思えないこの身の悲しさのために、心までも以前とは違うものになってしまったのだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌三 1200

詞書「かしこまる事侍りて里に侍りけるを、忍びて曹司にまゐれりけるを、大臣のなどか音もせぬなど恨み侍りければ」
 我が身とも思えない我が身の悲しさに、心まで変わってしまったのだろうか、と詠んだ歌である。謹慎の身となって心まで別人のようになったと嘆き、便りをしなかったことを責める大臣にわびている。
 詞書によれば、作者が謹慎すべきことがあって里に下がっていたが、ひそかに宮中の局に参っていたところ、大臣がどうして便りもしないのかと恨んだので、詠んだ歌である。大臣は藤原実頼を指すとみられる。
 作者の大輔は、後撰和歌集の時代の女房歌人で、源弼の娘とされる。

 初句「我が身にも」は、自分の身でも、の意である。
 二句「あらぬ我が身の」は、ないような我が身の、の意で、初句と合わせて、自分の身とも思えない身をいう。「我が身」を重ねて、謹慎の身の変わりようを強めている。
 三句「悲しきに」は、悲しさのために、の意である。
 四句「心もことに」は、心までも以前とは異なって、の意で、「こと」は異なるさまをいう。
 結句「なりやしにけん」は、なってしまったのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「けん」で結ぶ係り結びとなっている。

かしこまる:謹慎する
ざうし:宮中で女房などに与えられた部屋、局
おほいまうちぎみ:大臣
作者
大輔
出典
後撰和歌集
前の歌
宮人とならまほしきを女郎花 野辺より霧の立ち出でてぞ来る
次の歌
世の中を知らずながらも津の国の なには立ちぬるものにぞありける