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何にかは袖の濡るらん白浪の
なごりありげも見えぬ心を

歌の意味
どうして袖が濡れるのだろう。白波の名残のような未練ありげな様子など、少しも見えない心なのに。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 885

詞書「返し」
 どうして袖が濡れるのだろう、白波の名残のような未練ありげな様子も見えない心なのに、と詠んだ歌である。名残に袖が乾かないと訴える相手に対し、あなたの心にそんな未練は見えないと、からかうように切り返している。
 前歌の第八百八十四首への返しである。前歌の「袖」「白浪」「なごり」を受けて応じている。
 作者の大輔は女房で、詳しい出自は定かでない。小野道風、藤原朝忠、藤原敦忠らと恋の歌を交わしたことで知られる。

 初句「何にかは」は、どうして、の意で、「かは」は疑問の係助詞である。
 二句「袖の濡るらん」は、袖が濡れるのだろう、の意で、初句の「かは」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 三句「白浪の」は、白波の、の意で、前歌の三句をそのまま受けている。
 四句「なごりありげも」は、名残がありそうな様子も、の意で、「なごり」に「余波」と「名残」を掛け、前歌の四句を受けている。
 結句「見えぬ心を」は、見えない心なのに、の意で、「を」は逆接を表す。二句と倒置になっている。

なごり:波が引いた後に残る水の「余波」と、「名残」を掛ける
作者
大輔
出典
後撰和歌集
前の歌
いたづらに立ち帰りにし白浪の なごりに袖の干る時もなし
次の歌
誓ひても猶思ふには負けにけり 誰がため惜しき命ならねば