古典和歌stream

万代にかからん露を女郎花
何思ふとかまだき濡るらん

歌の意味
万代までもかかるはずの露なのに、女郎花よ、何を思うといって、早くも濡れているのだろう。
鑑賞
巻第六 秋歌中 282

詞書「返し」
 万代までもかかるはずの露なのに、女郎花は何を思って早くも濡れているのだろうと返した歌である。長く続くはずの仲であるのに、早くも涙を訴える相手の性急さを、軽くたしなめている。
 前歌の第二百八十一首と贈答をなす。本巻の第二百八十一首から第二百八十四首までは、右大臣藤原師輔と大輔との贈答が四首続いている。
 作者の「大輔」は源弼の娘と伝えられる女房である。醍醐天皇の中宮藤原穏子に仕えたとされ、藤原実頼、師輔の兄弟らと多くの贈答歌を交わした。

 初句「万代に」は、万代までも、の意で、長く続く仲であることを示す。
 二句「かからん露を」の「かかる」は露がかかる意で、「ん」は推量の助動詞「む」の連体形である。前歌の「露けき」を受けている。
 三句「女郎花」は、女郎花よ、の意で、前歌の三句と同じ語を置いて応じている。
 四句「何思ふとか」の「か」は疑問の係助詞で、何を思うといって、の意である。
 結句「まだき濡るらん」の「まだき」は、早くも、の意、「らん」は原因を推量する助動詞の連体形で、四句の「か」と係り結びをなす。前歌の「袖さへ濡るる」を受け、次歌の第二百八十三首も「まだき濡るとも」と受けている。

よろづよ:限りなく長い年月
作者
大輔
出典
後撰和歌集
前の歌
折りて見る袖さへ濡るる女郎花 露けきものと今や知るらん
次の歌
おき明かす露の夜な夜な経にければ まだき濡るとも思はざりけり