いたづらに立ち帰りにし白浪の
なごりに袖の干る時もなし
- 歌の意味
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むなしく立ち帰ってしまった白波の名残のように、むなしく帰った後の名残で、私の袖は乾く時もない。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 884
詞書「大輔がもとにまうで来たりけるに、侍らざりければ、帰りて又の朝につかはしける」
むなしく立ち帰った白波の名残に、袖の乾く時もない、と詠んだ歌である。訪ねて行ったのに相手が不在でむなしく帰ったことを、寄せては返す白波にたとえ、その後も涙で袖が乾かないと訴えている。
詞書によれば、大輔のもとへ訪ねて来たがいなかったので、帰って翌朝に送った歌である。次歌の第八百八十五首は大輔による返しで、二首で贈答となっている。
作者の「朝忠朝臣」は藤原朝忠である。三条右大臣藤原定方の子で、中納言に至った。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに」の歌が採られている。
初句「いたづらに」は、むなしく、の意である。
二句「立ち帰りにし」は、帰ってしまった、の意で、波が返る意と自分が帰る意を重ねている。
三句「白浪の」は、白波の、の意で、次歌の第八百八十五首も三句に「白浪の」を置いて応じている。
四句「なごりに袖の」は、名残に袖が、の意で、「なごり」に波が引いた後の「余波」と「名残」を掛けている。
結句「干る時もなし」は、乾く時もない、の意で、涙で袖が濡れ続けることを表している。
なごり:波が引いた後に残る水の「余波」と、「名残」を掛ける
ふ:乾く
- 作者
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藤原朝忠
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いとかくてやみぬるよりは稲妻の 光の間にも君を見てしか
- 次の歌
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何にかは袖の濡るらん白浪の なごりありげも見えぬ心を