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白浪のうち出づる浜の浜千鳥
あとや尋ぬるしるべなるらん

歌の意味
白波が打ち寄せる浜の浜千鳥の足跡のように、私の書き送るこの手紙が、あなたを尋ねていく道しるべになるのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 828

詞書「女のもとにつかはしける」
 白波の寄せる浜の千鳥の足跡が、尋ねていく道しるべとなるのだろうか、と詠んだ歌である。千鳥の足跡を文字にたとえる伝えを踏まえ、自分の手紙が相手のもとへ至る手がかりになればと願っている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。本巻の第八百三十六首も水鳥の「あと」に筆跡を重ね、手紙を交わす恋を詠んでいる。
 作者の「朝忠朝臣」は藤原朝忠である。三条右大臣藤原定方の子で、中納言に至った。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに」の歌が採られている。

 初句「白浪の」は、白波が、の意である。
 二句「うち出づる浜の」は、打ち寄せる浜の、の意である。
 三句「浜千鳥」は、浜辺にいる千鳥の意で、上の句の「浜」を重ねて調子を整えている。
 四句「あとや尋ぬる」は、跡を尋ねる、の意で、「あと」に千鳥の「足跡」と、手紙の「筆跡」を掛けている。「や」は疑問の係助詞である。
 結句「しるべなるらん」は、道しるべとなるのだろうか、の意で、四句の「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。

はまちどり:浜辺にいる千鳥
あと:千鳥の「足跡」と、手紙の「筆跡」を掛ける
しるべ:道案内、手引き
作者
藤原朝忠
出典
後撰和歌集
前の歌
言の葉はなげなるものと言ひながら 思はぬためは君も知るらん
次の歌
大島に水を運びし早舟の はやくも人にあひ見てしかな