時しもあれ花の盛りにつらければ
思はぬ山に入りやしなまし
- 歌の意味
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時もあろうに花の盛りに、あなたがこうもつれないので、思いもよらぬ山に入って世を捨ててしまおうか。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 70
詞書「小弐につかはしける」
花の盛りというよい時節に、相手がつれないので、いっそ思いもかけない山に入って世を捨ててしまおうかと、恋の恨みを訴えた歌である。花見の季節の華やぎと、恋の憂さに沈む心とを対比させている。
詞書によれば、小弐に贈ったものである。次歌は小弐の返歌で、二首は贈答をなしている。
作者の藤原朝忠は藤原定方の子で、中納言に至った。土御門中納言とも呼ばれ、三十六歌仙の一人である。
初句「時しもあれ」は、ほかに時もあろうに、の意で、よりによってこの時に、という嘆きを表す。
二句「花の盛りに」は、桜の盛りの時節を示し、喜ばしいはずの季節であることを強調している。
三句「つらければ」は、あなたがつれないので、の意で、理由を示す。
四句「思はぬ山に」は、思いもかけない山、すなわち世を捨てて入る山を示す。次歌の第七十一首は同じ「思はぬ山」を受けて返している。
結句「入りやしなまし」の「や」は疑問の係助詞で、連体形「まし」と係り結びをなす。「まし」はためらいを含む意志で、山に入ってしまおうか、と思い迷う心を表す。
いる:山に入って出家、遁世する
- 作者
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藤原朝忠
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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匂ひ濃き花の香もてぞ知られける 植ゑて見るらん人の心は
- 次の歌
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我がために思はぬ山の音にのみ 花さかりゆく春を恨みむ