匂ひ濃き花の香もてぞ知られける
植ゑて見るらん人の心は
- 歌の意味
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匂いの濃い花の香りによって、おのずと知られたことだ。この花を植えて眺めているであろう人の心のほどは。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 69
詞書「御返し」
前歌で、桜を所望した相手から、山里で散っては盛りも知られなかっただろうと詠みかけられたのに対し、濃い花の香によって、花を植えて眺める人の心が知られたと返した歌である。花の香の濃さに、花を愛する人の心の深さを重ねている。
前歌の第六十八首と贈答をなす。
作者の「衛門のみやすん所」が誰を指すかについては定説を見ない。御息所は天皇や皇太子の寝所に仕えた女御、更衣などの呼び名で、「衛門」は父や縁者の衛門府の官職にちなむものと見られる。
初句「匂ひ濃き」は、花の香りが濃いことを示し、前歌の第六十八首の「にほふ盛り」を受けている。
二句「花の香もてぞ」の「もて」は、〜によって、の意で、「ぞ」は係助詞として三句の連体形「ける」と係り結びをなす。
三句「知られける」の「れ」は自発で、おのずと知られた、の意を表し、「ける」は気づきの詠嘆である。ここで句切れとなる。
四句「植ゑて見るらん」の「らん」は現在推量で、花を植えて眺めているであろう、の意である。本巻の第四十七首、第四十九首と同じく、花を植えることが詠まれている。
結句「人の心は」は、三句に対する倒置で、花を植えて愛でる人の心の深さを示している。
おほんかへし:身分の高い人の返歌
- 作者
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衛門のみやすん所
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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山里に散りなましかば桜花 にほふ盛りも知られざらまし
- 次の歌
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時しもあれ花の盛りにつらければ 思はぬ山に入りやしなまし