山里に散りなましかば桜花
にほふ盛りも知られざらまし
- 歌の意味
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山里でひっそりと散ってしまったならば、桜の花の美しく咲き匂う盛りも、人に知られなかっただろう。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 68
詞書「衛門の御息所の家太秦に侍りけるに、そこの花おもしろかなりとて折りにつかはしたりければ、聞こえたりける」
太秦の衛門御息所の家の桜が見事だと聞いて、枝を折りに使いをやったところ、その桜も山里で散ってしまえば盛りを知られなかっただろうと詠んで贈った歌である。花を所望したことを、人知れず散るはずの花の美しさを世に知らせるためだと、機知をもって言いなしている。
詞書によれば、衛門御息所の家が太秦にあったとき、そこの花が見事だというので折りに人をやり、そのときに申し上げた歌である。次歌は衛門御息所の返歌で、二首は贈答をなしている。
作者の藤原師尹は藤原忠平の五男である。左大臣に至り、小一条左大臣と呼ばれた。
初句「山里に」は、都から離れた太秦の地を、山里として示している。
二句「散りなましかば」の「ましかば」は反実仮想の条件で、もし散ってしまったならば、の意を表し、結句の「まし」と呼応する。
三句「桜花」は、衛門御息所の家に咲く桜を示す。
四句「にほふ盛りも」の「にほふ」は花が美しく咲き映える意で、その盛りの美しさも、の意である。次歌の第六十九首は「匂ひ濃き」と受けて返している。
結句「知られざらまし」の「まし」は反実仮想で、人に知られなかっただろう、の意を表す。
うづまさ:山城国の地名、今の京都市右京区のあたり
みやすんどころ:天皇や皇太子の寝所に仕えた女御や更衣などの呼び名
きこゆ:申し上げる
- 作者
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藤原師尹
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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青柳のいとつれなくもなりゆくか いかなる筋に思ひよらまし
- 次の歌
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匂ひ濃き花の香もてぞ知られける 植ゑて見るらん人の心は