もろともにいざと言はずは死出の山
越ゆとも越さむものならなくに
- 歌の意味
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一緒にさあ行こうと言ってくれないならば、たとえあなたが死出の山を越えるとしても、一人で越えさせるものではないのに。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 962
詞書「公頼朝臣の娘に忍びて住み侍りけるに、わづらふ事ありて、死ぬべしと言へりければ、つかはしける」
一緒にさあと言ってくれないならば、たとえあなたが死出の山を越えるとしても、一人で越えさせるものではないのに、と詠んだ歌である。死を口にする恋人に、死ぬなら共にと誘ってほしい、一人で行かせはしないと、深い愛情を伝えている。
詞書によれば、藤原公頼の娘のもとにひそかに通っていたころ、娘が病気になり、もう死ぬだろうと言ってきたので送った歌である。公頼は本巻の第九百四十二首の詞書にも見える人物である。
作者の「朝忠朝臣」は藤原朝忠である。三条右大臣藤原定方の子で、中納言に至った。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに」の歌が採られている。
初句「もろともに」は、一緒に、の意である。
二句「いざと言はずは」は、さあと言わないならば、の意で、「いざ」は人を誘う語、「ずは」は打消しの仮定を表す。
三句「死出の山」は、死者が越えるという冥途の山、の意である。
四句「越ゆとも越さむ」は、越えるとしても越えさせようか、の意で、「越す」は越えさせる意である。
結句「ものならなくに」は、ものではないのに、の意で、一人で越えさせはしないという強い思いを表している。
しでのやま:死者が越えるという冥途の山
もろとも:一緒に、共に
- 作者
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藤原朝忠
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いかにしてかく思ふてふことをだに 人づてならで君に語らん
- 次の歌
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かくばかり深き色にもうつろふを なほ君きくの花と言はなん