古典和歌stream

旅行かば袖こそ濡るれもる山の
雫にのみは負ほせざらなん

歌の意味
旅に行けば袖が濡れるものだ。その濡れを、漏れ落ちる守山の雫のせいにばかりはしないでほしい。
鑑賞
巻第六 別歌 341

詞書「題しらず」
 旅に出れば袖が濡れるが、それを漏れ落ちる守山の雫のせいにばかりしないでほしい、涙のためでもあるのだからと詠む歌である。「漏る」の名をもつ守山の雫にかこつけて、旅の涙を言外に表している。ここから旅の道中を詠む歌が続いていく。
 古今和歌集の秋歌の紀貫之の「白露も時雨もいたくもる山は下葉残らず色づきにけり」のように、守山は「漏る」を掛けて詠まれてきた歌枕である。

 初句「旅行かば」は、旅に行けば、の意である。
 二句「袖こそ濡るれ」は、袖が濡れる、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「濡るれ」で結ぶ。ここで句切れとなる。
 三句「もる山の」は、近江国の歌枕の守山と、雫が「漏る」とを掛けている。
 四句「雫にのみは」は、雫のせいにばかりは、の意である。
 結句「負ほせざらなん」は、せいにしないでほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。

もる:近江国の歌枕の守山と、雫が漏れる意とを掛ける
おほす:責任や罪を他に負わせる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
東路の木のしたくらくなりゆかば 都の月を恋ひざらめやは
次の歌
潮満てるほどに行き交ふ旅人や はまなの橋と名付けそめけん